1月と2月の本 往復5時間の痛勤時間は長いけれど
2018-02-22


ヘレンケラーの日本人版ですが、天才的な津軽三味線を弾く少女を加えて深みが出ています。泣けます。その真摯なひたむきさに、前近代的な日本に要綱帰りの独身女性の生き辛さがわかればわかるほど、泣けてきます。日本は果たして女性にとって自由な国になったのかしらと考えさせられます。

・うずら大名 畠中恵 集英社文庫 20171220  620円
 自称大名の有月、一緒に剣道場に通った泣き虫の吉之助、殺人事件の謎。
有月が、冷静で頭と腕がよく口が悪く意地悪、大事に飼っているうずらの佐久夜が「御吉兆!」と鳴くのがすばらしい。うずらは普段袋に入れられて有月の腰巾着におとなしく入っているのに、ことあらば、敵を突っついてやっつけるので、読んでいると非常にすっきりする。立派なうずらである。そのように、小さい鳥を根気良く躾けることのできる有月は、実は大層立派なのか?と疑いつつ、ひょうひょうとぼけボケしているような豪農家の吉哉こと名主の吉之助がまた、実は賢く勇気もあるのか、ないのか?などと人物が生き生きしていて、いつもながら楽しく一気読みをしてしまいました。身分、今で言えば格差社会での下層階級のものの鬱屈した気持ちとやりきれなさも良くわかり、身につまされます。

・青空の卵  坂本 司 創元推理文庫 20060224 743円
・子羊の巣  坂本 司 同      20060626 686円
・動物園の鳥  坂本 司  同    20061013 600円
 引きこもり探偵三部作
 しばらくぶりに再読
著者のデビュー作だから、想いの丈が込められていて人物造詣が丁寧。家族カウンセリングをしていると出会う親子の葛藤場面、親から子への愛ゆえの支配、子が親を思うあまりの様々な困難さが網羅されていて、理解しやすい。
鳥井真一のキャラが、僕、坂木司の状況説明ですごく純粋で格好良いものに見えてくる。
繊細な気持ちの動きを丁寧に追っているから、作者はこのあたりに近しい職業かな、と思う。男性視点から見ているようで、内容はACの女性視点に近い。読後もこの二人に幸多かれと願ってしまうような儚いもので満たされる。現在の作品も、心の痛みに敏感な作者の視点を感じるが、最近は吹っ切れてきたのかな?

・短劇  坂木 司  光文社文庫 20110220 619円
 怖い話が次々と、、始めはほのぼの、それからどんどんブラックに、、驚きの結末の続く26の短編集

・アンティーク弁天堂の内緒話  仲町 六絵 幻冬舎文庫 20180115 540円
 女子高校生の紫乃、ふることぎきという異能がある。弁天堂のアルバイト、店主は影洸浩介、弁天様の孫。この組み合わせでは、いずれからくさ図書館や、皆さんと出会うだろうな、と思いながらツクモガミと持ち主との謎を解いていく。

・おとなりの清明さん 陰陽師は左京区にいる 仲町六絵 メディアワークス文庫 570円
 からくさ図書館に出てくる小野篁、時子様が良く知っている、安倍清明がお隣さんだったら。なんていう夢のような状況下の高校生桃花さんのあやかしとの日常。
清明さんがちょっと現実離れしていて、ぴんと外れでおかしい。

・羊と鋼の森  宮下奈都  文春文庫 20180210 650円
 お仕事小説と成長物語の興味と、繊細で優しく、ある意味熱血なキャラクターに惹かれました。オリンピックの超一流アスリートたちにも共通する、一筋にひたむきに望み続ける姿が胸を打ちます。自分の全部をかけて毎日こつこつ努力できること、凡人にはその努力ができないのです。

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[乱読三昧]

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